リチウムイオン電池の特徴

リチウムイオン電池の専門技術

リチウムイオン電池の特徴
リチウムイオン電池はいろいろなところで使われていますが、なぜたくさん使われているのでしょうか。リチウムイオン電池の特徴を知ることでその理由がわかってきます。こちらのページではリチウムイオン電池の特徴について説明します。
まとめ
・容量が大きいので、一度充電するとたくさん使える
・寿命が長いので、買ってから長く使える
・出力電圧が大きいので、パワーが必要な機器を動かせる

 

リチウムイオン電池の特徴

いろいろなところで使われているリチウムイオン電池にはほかの電池にはない特徴がたくさんあります。そのなかでも特にユニークなものについて紹介します。

充電して何度でも使うことができる

これはご存知かと思いますが、一番の特徴は充電することで何度も使えることです。乾電池のように1回使い切りではないので、電池が切れたからといって買いに行ったり、予備を買っておく必要がないです。

現在のスマホの電池には、リチウムイオン電池が使われています。もしスマホの電池が1回使い切りだったら毎日電池を入れ替えることになって、家の中が電池だらけになってしまいますね。旅行先で電池が切れないように何個も予備の電池を持っていくなんて無駄な荷物過ぎです。

繰り返し使うことができる電池であるリチウムイオン電池を使うことで、機器の使いやすさがとても向上します。

このような繰り返し使える電池を「二次電池」もしくは「充電池」と呼びます。一方で、乾電池のように一回しか使えない電池を「一次電池」と呼びます。

以下ではリチウムイオン電池が他の二次電池と比べてどんな特徴があるか説明します。このページの下に代表的な二次電池である「鉛蓄電池」、「ニカド電池(ニッケルカドミウム電池)」、「ニッケル水素電池」、「リチウムイオン電池」の特徴を比較した表を記載していますので参考にしながら読んでみてください。

一度充電するとたくさん使える

たくさん電気をためることができることが第2の特徴です

たくさん電気をためることができる電池を使うと、一度フル充電すると長い時間使うことができるというメリットがあります。スマホであれば何時間使えるか、モバイルバッテリーであればスマホを何回充電できるか、電気自動車なら何km走行できるかに関係します。

モバイルバッテリーに書かれている「3.7 V(ボルト), 10,000 mAh(ミリアンペアアワー)」などという値が、電池にためることができる電気を表しています。容量、もしくは電力容量とも呼ばれます。この例の場合、容量は3.7 V × 10,000 mAh = 37,000 mWh (= 37Wh ワットアワー)になります。単純に言うと消費電力が1 Wの機器を37時間駆動できることを意味します。

現在市販されているリチウムイオン電池の容量は、電池1 kgあたりおおよそ150~200 Whです。リチウムイオン電池に次いで高い容量を持つニッケル水素電池の場合、その容量は1キログラムあたり60~120Wh/kg程度です。

このようにリチウムイオン電池は容量が大きいため、一回充電するとたくさん使うことができるという特徴があります。

買ってから長く使える

寿命が長いことが第3目の特徴です。例えばスマホを買った直後は電池の減りが少なくても、使って1年ぐらいしてくると電池が早く減ようになってくることがありますね。これは電池の容量が低下することで、フル充電してもためることができる電気が減ってきていることが原因です。

電池は使っているうちに劣化して、容量が減っていきます。劣化を決める一番の要因は「何回充電と放電を繰り返したか」です。容量が、例えば80%まで減るまでの充放電の回数を「寿命」と呼んだりします。(ある特定の使用方法を想定して何年使えるかという意味で「寿命」と呼ぶ場合もあります。)リチウムイオン電池の場合、約1500回の繰り返しが可能とされています。これは他の二次電池である鉛蓄電池の200-300回や、ニッケル水素電池の300-500回よりも多く、リチウムイオン電池は長寿妙な電池といえます。

このように、リチウムイオン電池の場合、他の二次電池と比べて長期間使っても容量が減りにくい長寿命という特徴があります。

パワーが必要な機器を動かせる

リチウムイオン電池の第4の特徴は、その出力電圧が高いことです。

「出力電圧」は電池の出力パワーとみなすことができます。出力電圧が高い電池であれば、駆動するために高い電圧が必要な機器を動かすことができ、電池の使用範囲が広がります。

複数の電池を直列に接続すれば、電圧は直列の個数分増やすことができますが、その分かさばったり重くなったりします。よって電圧が大きいリチウムイオン電池は、高出力が必要な機器を動かせるコンパクトな二次電池ということができます。

リチウムイオン電池の出力電圧は3.7 V(ボルト)です。それ以外の二次電池の出力電圧は、鉛蓄電池で2.0 V、ニカド電池やニッケル水素電池でが1.2Vと、リチウムイオン電池の半分程度と低い値です。

このようにリチウムイオン電池は高い出力を持つという特徴があります。

環境にやさしい

リチウムイオン電池は環境にやさしいという特徴があります

リチウムイオン電池に含まれる自然界や人体への悪影響を及ぼすような重金属が、鉛蓄電池やニカド電池と比べて少ないためです。鉛蓄電池は鉛、ニカド電池はカドミウムを含みます。これらの重金属は環境に漏れ出し生物が吸収することで悪影響が出る可能性があることが知られています。

この特徴を一般ユーザーが気にすることはほとんどありませんが、産業応用する上では重要です。電池やそれを含む危機が不法に廃棄されたり不適切に処分されて有害な物質が自然界に流れ出すと問題になります。よって電池やそれを使う機器を扱う企業は、商品の取り扱いや処理方法について考慮する必要が発生します。

人体に悪影響を及ぼす物質についてはさまざまな法規制があり、企業はこれらに準じて事業を行う必要があるため、法規制が少ない環境負荷の小さい電池の方が使いやすいのです。

もちろんリチウムイオン電池が環境にやさしいといっても、決して口に入れたり、不適切な廃棄をしないでください。

▲価格が高い

上で見てきたようにリチウムイオン電池はいいことずくめにように思えますがデメリットもあります。それは他の二次電池と比べて値段が高いことです。

これは電池を作るための原料自体が高いこと、またそれをもとに電池の構成部材を合成するための費用が高いこと、電池を安全かつ長く使えるようにするための仕組みを作りこむための費用が含まれているからです。

現在もリチウムイオン電池の開発は盛んに進められていますので、より高性能で安価なリチウムイオン電池が実現することを期待したいですね。

二次電池の比較表

最後に代表的な二次電池である「鉛蓄電池」、「ニカド電池(ニッケルカドミウム電池)」、「ニッケル水素電池」、「リチウムイオン電池」の特徴を表でまとめます。

種類 容量(Wh/kg) サイクル(回) 充電速度(時間) 電圧(V) 環境負荷 コスト
鉛蓄電池 30-50 200-300 8-16 2.0
ニカド電池 45-80 1000 1-2 1.2
ニッケル水素電池 60-120 300-500 2-4 1.2
リチウムイオン電池 90-250 500-2000 1-4 3.7

※ 2列目の容量は電池1 kgあたりの容量Wh(ワットアワー)を示しています。

表の引用元:https://batteryuniversity.com/learn/article/secondary_batteries

これらリチウムイオン電池の特徴のもととなるリチウムイオン電池の仕組みについては「リチウムイオン電池の仕組み【基本をわかりやすく】」のページで説明していますので参考にしてみてください。