リチウムイオン電池の構造

リチウムイオン電池の専門技術

リチウムイオン電池の構造
リチウムイオン電池の構造を知ると、リチウムイオン電池の仕組みや動作方法を理解することに役立ちます。この記事では、リチウムイオン電池の中にはどんなものが入っていて、どんな構造になってて、それがなぜなのかについて説明します。
まとめ
・正極とセパレータと負極を重ねたシートをコンパクトに容器に詰め込んだ構造
・円筒型、角型、ラミネート型に分類される

リチウムイオン電池における最少限の構成要素

まずはリチウムイオン電池の必須の構成要素について見ていきます。

リチウムイオン電池の動作に必要最小限の構成要素は以下の四つです。
① 正極
② 負極
③ 電解液
④ セパレータ

リチウムイオン電池が充電するときには、リチウムイオンが①正極から③電解液を介して②負極へ移動します。これと同時に①正極から外部電源に電子が取り出され、外部電源から電子が②負極に入ります。

放電するときは、充電と逆の反応が起こります。つまり、リチウムイオンが②負極から③電解液を介して①正極へ移動します。これと同時に②負極から外部に電子が取り出され、外部から①正極に電子が入ります。

以下のようにまとめることができます。

充電 リチウムイオン 正極 → (電池内部の)電解液 → 負極
電子 正極 → 充電用の外部電源 → 負極
放電 リチウムイオン 正極 ← (電池内部の)電解液 ← 負極
電子 正極 ← 電池で動かす機器 ← 負極

このイオンの動きは正極と負極の電位差(エネルギ差)によって生じています。そのため、もし電池の内部で①正極と②負極が接触して同じ電位になると、このような充放電反応を起こすことができず電池として使うことができません。

これを防ぐ役割を持つものが ④セパレータ です。④セパレータは①正極と②負極の間に設けて、①正極と②負極の接触を防ぎます。ただし、上の表に記すように充放電の際にリチウムイオンは電池の内部を移動するので、④セパレータはリチウムイオンを通す役割を持つ必要があります。実際は、リチウムイオンを通す電解液がセパレータにしみこむことで、イオンの移動を担保しています。

上で述べた「イオンの動きは正極と負極の電位差(エネルギ差)によって生じています」という内容については本サイト「リチウムイオン電池の端子電圧は電極電位と過電圧で決まる」のページに詳しく説明していますので参考にしてみてください。

以上より、リチウムイオン電池の動作のための最小限の構成要素は、①正極、②負極、③電解液、④セパレータであることがわかりました。
※ もちろんですが、①~④を入れるための電池の容器も必要です。

リチウムイオン電池の構造

基本構造

リチウムイオン電池の基本的なかたちは、①正極と②負極が④セパレーターを挟んで向かい合った配置で、それらの中に③電解液がある構造です。

この位置関係を簡単に示すと下のようなります。
リチウムイオン電池の構造

ただし、これは極めて原始的なリチウムイオン電池の姿です。もちろんこのまま電池として動くのですが、よりユーザーにとって良い電池になるように、これまで工夫がなされて、今の電池の形に進化してきています。その進化について考えることで、今の電池の姿を考えてみましょう。

1.たくさん電気をためたい=容量を大きくしたい

電気を溜める量は正極や負極の量が多いほど多くなります。しかし、充放電の際にリチウムイオンが電極に入ったり出たりする必要があるため、量を多くしようとして正極や負極を分厚くすると表面側から離れた奥の方からリチウムイオンを取り出したり入れたりすことが困難になります。

そこで、厚さを増やすのではなく電極を薄いシート状にして、できるだけ大きい面積の電極を容器に詰めることで、容量を増やす工夫をしています。

2.電圧が高いほうがいい=電池内部の抵抗を下げたい

電池の内部では電解液を介してリチウムイオンが正極と負極の間を行き来します。このときに、リチウムイオンの移動距離が大きいと電池内部での抵抗が大きくなり、電圧が下がってしまうデメリットがあります。そこでリチウムイオンの移動距離が小さくなるように正極と負極のシートは向かい合った状態でできるだけ距離を近づけます。

ただし、上で述べたように正極と負極の間にはセパレータを設ける必要があるので、3者のシートを正極/セパレータ/負極のように重ねることで隙間を小さくします。

その重ねたシートを丸めたり、重ねたりしてコンパクトに容器に詰めたものが今の姿です。

現在のリチウムイオン電池の構造は大きく分けて2種類です。

  • 円筒形・角形
  • ラミネート型

以下で詳細を説明します。

円筒型・角型の構造

円筒型および角型と呼ばれるタイプは、長細いシート状の正極/セパレータ/負極を重ねたものを、捲回機(けんかいき)と呼ばれる機械でくるくると巻き、それを容器に入れた構造です。

円筒型は、巻いたものを円筒状の容器に入れたものです。巻いた電極は円筒状になるので、円筒状の容器との隙間が小さく無駄がない構造といえます。テスラ自動車社の電気自動車では円筒型のリチウムイオン電池が使用されています(2020年時点)。

角型は、巻いた電極を直方体の容器に入れたものです。出来上がった電池同士を並べて使うとき、電池の容器の形状が四角なので隙間なくコンパクトに設置することができます。テスラ自動車社以外の多くの自動車メーカーでは電気自動車用に角型のリチウムイオン電池を用いています。

捲回型

ラミネート型の構造

ラミネート型では、1枚の長い電極シートをくるくる巻くのではなく、シートを重ね合わせて、ラミネートでパッキンした構造です。ラミネートとは、金属箔を絶縁体でコートしたもので、レトルト食品の容器に使われているものに近い素材です。パウチ型とも呼ばれます。

多数の電極を重ねて、最終的に電極部分を繋ぐ必要があるなど手間が掛かるという欠点はありますが、最終的な仕上がりを非常に薄くできるのでスマートフォン用の電池に使われています。
積層型