乾電池の名前の由来と発明の歴史

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乾電池の名前の由来と発明の歴史
乾電池は私たちの生活に一番身近な電池ですね。でも乾電池の”乾”ってどういう意味なのでしょうか?”乾いている”という意味なのでしょうか?乾電池は液漏れするということから、中に液体が入っているような気もします。
こちらのページでは乾電池の名前の由来と、その発明の歴史についてわかりやすく説明します。
まとめ
・乾電池の由来は””乾いた電池”
・電解液を固体にしみこませた使いやすい乾電池が19世紀後半に生まれた

乾電池の名前の由来

乾電池の”乾”は、”かわいた”という意味から名付けられています。英語では乾電池のことをDry Cell もしくはDry batteryと呼ぶことからもそのことがわかります。

でも乾電池は液漏れするという話を聞いたことがありますよね?リモコンに長い間入れていた乾電池に白い粉がついているのは、液漏れによるものです。では”乾”電池なのに「乾いていないのでは?」と思われるかもしれませんが、”乾”というのは液体をタプタプさせたような状態でつかうのではなく、固体にしみこませることで扱いやすくなっているというものです。乾電池が発明されるより以前は、電解液がタプタプの電池が使用されていました。このような電池を”湿電池”と呼びます。中学校で習うダニエル電池とかボルタ電池も湿電池に分類されます。

脱線しますが、スマートフォンや電気自動車に使用されるリチウムイオン電池も液体の電解液を用いていて、乾電池と同様に固体にしみこませて使用してます。リチウムイオン電池の電解液を固体にしてしまおうというとしているのが全固体リチウムイオン電池です。電解液を固体にすることで電池の特性や安全性を向上させようとしているのです。現在はまだ市販されておらず各電池メーカーが研究開発している段階ですが、将来的には実用化されるでしょう(2019/1時点)。

乾電池発明の歴史

乾電池は1886年(明治19年)にドイツ人科学者のカール ガスナー(Carl Gassner)氏によって発明されました。1886年(明治19年)にドイツで特許(German patent 37,758)取得し、その後1888年にアメリカで特許取得しています。

乾電池の誕生

乾電池のもととなった電池はルクランシェ電池です。これは1866年にフランス人科学者のジョルジュ ルクランシェ氏によって発明された電池です。

正極に炭素、減極剤として二酸化マンガン、負極として亜鉛、電解質には塩化アンモニウム水溶液を用いています。水溶液の電解液を用いるのは扱いずらいので、多くの科学者が電解液を固定化することで、より使いやすくすることを試みていました。 たとえば、セルロース、おがくず、紡糸ガラス、アスベスト繊維、およびゼラチンを使用してさまざまな実験が行われました。

乾電池の発明者であるガスナーは、電解液を吸湿性の材料に保持させて容器上部を石膏で封口した電池を発明しました。具体的には塩化アンモニウムを石膏と混合してペーストを作り、少量の塩化亜鉛を加えて殻の寿命を延ばした。二酸化マンガンカソードをこのペースト中に浸漬し、そして両方ともアノードとしても作用する亜鉛シェル中に密封した構造となっています。

内部から液体が漏出しないことから,このガスナー発明を”乾いた電池”ということで乾電池と呼ぶようになったのが乾電池の由来と言われています。

日本での乾電池の発明

日本では乾電池は1887年(明治20年)に屋井先蔵(やい さきぞう)により発明されました。しかし屋井の特許出願が遅れたため、日本最初の電池の特許所有者は屋井ではなく高橋市三郎となっています。

屋井は新潟県 長岡で1863年(文久3年)に生まれ、13才で東京の時計店に丁稚として入りました。電池で正確に動く「連続電気時計」の開発に成功したのですが、売れ行きは良くありませんでした。当時使用していた電池(湿電池)は冬になると電解液が凍って使えなくなるうえに、液漏れが起こるため手入れが必要だったためです。屋井はこの問題を解決するために乾電池の開発を行い、1887年に発明に成功しました。